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てんかん起因の事故防止へ 移動保障へ多様な支援を

報道部 田代真也
今年2月には京都市南区でてんかんの持病がある男性のトラックが歩行者2人をはねて死傷させる事故も起きた。事故防止へ多様な対策が求められている(2月7日・同区)
今年2月には京都市南区でてんかんの持病がある男性のトラックが歩行者2人をはねて死傷させる事故も起きた。事故防止へ多様な対策が求められている(2月7日・同区)

 てんかん発作に起因する交通事故の取材を続けている。京都市東山区の祇園で6年前に起きた暴走事故は、危険運転致死傷罪の適用対象にてんかんを加える法改正につながった。しかし、こうした厳罰化の裏側で病気への偏見や無理解が広がっていないか。てんかん患者が安心して暮らせる環境づくりこそ、事故防止への近道だと考える。

 てんかんが危険運転致死傷罪の適用対象となったのは、祇園事故から2年後の14年5月。翌月には道交法も改正され、免許の取得・更新時に病状を虚偽申告した場合、罰則が科されることになった。

 「運転中、いつ発作が起きるか分からずいつもびくびくしている」。京都市で暮らすてんかん患者の男性(25)は週1回、買い物のため車を運転する。だが、通勤や仕事で車を使うのは控えている。過去2年以内に発作は起きておらず、免許の取得条件は満たしている。主治医の承諾も得ており、運転することに問題はない。しかし、てんかん患者が起こす交通事故が報道されるたび、ハンドルを握るのをためらうようになった。「万が一のとき世間からたたかれるのが怖い」

 交通事故総合分析センター(東京都)によると、11〜16年の全国のてんかん発作による人身事故は年50〜70件台で推移し、横ばいが続く。死亡事故は一桁台が続いており、法改正後も減少していない。祇園事故遺族の1人は「厳罰化が行きすぎると、患者は持病を隠して運転し、事故を起こすリスクが高まる。生活に不利益を被らない環境づくりが大切」と話す。

 日本てんかん協会(東京都)は「車がなければ、暮らしが立ちゆかなくなる患者は多い。生活支援を抜きにした厳罰化は、不安に追い打ちをかけるだけだ」と指摘する。協会は現在、患者が無理なく車生活から離脱できるよう、鉄道事業者に運賃減免を要望する。ただ、てんかん患者を含む精神障害者を対象に割引きを実施しているのは、全国の鉄道事業者177社のうち半数以下の83社(4月現在)にとどまる。

 京滋関連では、京都市交通局が実施しているが、JR西日本のほか、阪急や京阪、近鉄など各私鉄はいずれも実施していない。そもそも京都府北部や滋賀の山間部など電車やバスが通っていない地域もある。事業者側からは「企業努力ではなく、国や自治体の施策として行われるべき」などの意見が上がる。

 日本も批准する障害者権利条約は、障害者が移動しやすい社会の構築を求めている。桃山学院大の栄セツコ教授(精神保健福祉論)は「運賃割引は、障害者の生活のためには不可欠だ」と強調する。

 近年は、車の自動運転など科学技術の進化も著しい。メーカーはすでに、センサーによる衝突防止装置付きの車を販売。てんかん患者をめぐる車環境は大きく変化している。悲惨な事故を繰り返さないためには、厳罰化に傾倒することなく、病や障害を抱えている人の移動を保障する多様な支援が必要だ。

[京都新聞 2018年8月8日掲載]

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