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日吉ダム非常用ゲート開放 防災体制問い直す機会に

南丹支局 本好治央
西日本豪雨で満水となった日吉ダム(南丹市日吉町・7月6日午後2時30分)
西日本豪雨で満水となった日吉ダム(南丹市日吉町・7月6日午後2時30分)

 7月の西日本豪雨で日吉ダム(南丹市日吉町)は満水となり、初めて非常用放流ゲートを開放した。下流の桂川沿いに大きな被害はなかったものの、ダムの水位低減効果の限界を示し、防災情報の発信に課題を残した。くしくも今年はダム運用開始20年の節目。住民が安心して暮らせるように、防災体制を問い直す機会にしてほしい。

 「雨のピークが4回あった。さらに降っていれば、下流に被害が出たかもしれない。過去に経験したことがない厳しい状況で、非常に緊張した」。水資源機構・日吉ダム管理所の今井敬三所長は西日本豪雨をこう振り返った。

 7月3日の降り始めから8日までの日吉ダムの流域平均総雨量は492ミリと、運用開始以降最大を記録した。ダムの貯水位は上昇し続け、最高水位を超えて201・4メートルにまで達した。

 6日午前4時、同管理所はダム湖に流れ込むのと同量の水を流す「異常洪水時防災操作」を始め、同午後2時には初めて非常用ゲートも開放した放水を実施。放流量は最大毎秒907トンとなった。

 ダム下流の桂川沿いでは5年前に襲った台風18号豪雨災害の記憶が新しく、緊張が走ったが、大きな被害は出なかった。この間に進んだ河道掘削の効果があったという。

 しかし、ダムに近い南丹市の観測点では台風18号の際の最高水位よりも1・3メートル高くなるなど、切迫した状況にあった。地元の住民は「堤防のぎりぎりまで水位が来ていた。氾濫するのではないかと、危険を感じた」と恐怖を語った。

 今回の豪雨ではダム運用を巡り、関係機関との情報伝達や住民への周知のタイミングが適切だったのか、全国的に問われている。浸水被害などで4人の犠牲者を出した愛媛県の大洲市は、ダムが大量放流を始める5分前に避難指示を出した。ダム側とは放流の2時間半前から情報のやりとりをしていたが、生かし切れなかったという。

 日吉ダムは今回、異常洪水時防災操作を開始する1時間以上前までに下流の自治体にその情報を通達。住民にはサイレンを鳴らしたり、広報車で呼び掛けたりした。ただ南丹市が浸水の危険があると判断し、桂川沿いの地域に避難指示を出したり、ダム放流情報を知らせたりしたのは、防災操作の開始から13時間たってからだった。

 同市は桂川の水位や消防団の情報などを基に避難指示を発令したといい、その結果、ある地区では避難者が1割にとどまった。住民は「ダムができて安心感があった」と振り返りつつ、「もっと強く避難を呼び掛けるため、放流情報発信の充実を」と訴えていた。市は今後、放流量を避難指示の発令基準に加えることも検討するとしている。

 近年、異常気象が相次ぐ中、日吉ダムにとって今回が「20年に一度の災害」のまま終わるとは思えない。西日本豪雨と同等かそれ以上の水害に対応し、住民の命を守るためにも、国をはじめ行政を交えた早急な検証が求められる。

[京都新聞 2018年8月15日掲載]

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