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止まらぬ貸出冊数減少 図書館の新しい姿、模索を

滋賀本社 笠原良介
リニューアルオープンした守山市立図書館 (同市守山5丁目)
リニューアルオープンした守山市立図書館 (同市守山5丁目)

 図書館のあり方が問われている。かつて滋賀県は1人当たりの貸出冊数で全国1位を誇ったが、この数年、減少が止まらない。電子書籍が普及し始め、簡単な調べ物ならインターネットで事足りる時代に、図書館はどうあるべきか、新しい姿が模索されている。

 県教育委員会は3月、「これからの滋賀県立図書館のあり方」を策定した。これを受けて県立図書館は今後、より具体的な行動計画を作る予定だ。1943年の開館以来初めてのことで、大西良子館長は「危機感がないといえばうそになる。課題は多い」と明かす。

 図書館の貸出冊数は全国的に減少傾向にある。11年に携帯電話の新規販売台数のうちスマートフォンが初めて半数を占め、電子書籍の普及も影響したと考えられる。全国平均は100人当たりで2009年度の560冊から16年度は540冊に減った。かつて1位を誇った滋賀県では、09年度の957冊をピークに減少し始め、16年度は797冊で2位だった。落ち込み幅が大きく、危機感を持つ理由の一つになっている。

 ただ、図書の貸し出しだけではなく、図書館が持つ新たな可能性を模索する動きが全国で出始めている。

 鳥取県立図書館は、これからの図書館のあり方を示唆する先進的な活動に贈られる「Library of the Year」を2度受賞した。いずれも受賞理由は「地域に役立つ図書館作り」。起業やビジネスへの支援など、従来の貸し出しとは異なる部分が評価され、こうしたサービスが貸出冊数増加につながっているという。

 慶応大の根本彰教授(図書館情報学)は「全国的に図書館は生き残り策を探っている。従来のサービスに加え、『空間』を提供するなど、さまざまなニーズに積極的に応えていく必要がある」と指摘する。

 滋賀県内で新たな動きがあった。今月1日にリニューアルオープンした守山市立図書館だ。カフェでコーヒーを片手に図書を読む若者やテーブルで談笑する高校生たち…。図書館のイメージを刷新したデザインはもとより、看護師らを招く健康相談会の開催や就労支援コーナー、市民活動の場となる多目的室や防音スタジオを設けたのが特徴だ。5歳の長女と絵本を探していた会社員の中島玲子さん(39)=草津市=は「ゆったりとした空間で長居したくなる。娘も自分から本を選び回って楽しそう」と目を細めた。図書館の「空間」の可能性を示す一例だ。

 公共図書館は、社会情勢の変化だけではなく、厳しい財政状況との折り合いをつけなければならない。県民の知的欲求に応え、調査研究やレクリエーションに貢献する施設であるために、受益者である県民を巻き込んだ議論が必要だ。

[京都新聞 2018年11月7日掲載]

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