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福知山ポッポランド休館1年 「鉄道のまち」誇り継承を

北部総局 井上真央
シャッターが降りたまま1年がたとうとしている福知山鉄道館ポッポランド(福知山市下新・新町商店街)
シャッターが降りたまま1年がたとうとしている福知山鉄道館ポッポランド(福知山市下新・新町商店街)

 北近畿の交通の要所として栄えた福知山市を象徴する展示施設「福知山鉄道館ポッポランド1号館」が、建物の老朽化で休館し、間もなく1年がたとうとしている。再開を望む声は根強いが、市の方向性は定まらない。目先の観光や産業振興ばかりにとらわれず、地域で連綿と続いてきた固有の文化を生かし、市民の誇りを育んでいく視点が必要と感じる。

 同館は、市が1998年に開設。福知山駅のジオラマや旧北丹鉄道、国鉄の備品など、500点を超える鉄道資料を展示した。戦後に全国に27あった旧国鉄の鉄道管理局が府内で唯一設置された「鉄道のまち」の歴史を物語る場所だったが、建物の老朽化で昨年4月から休館している。

 取材を通して知った同館の魅力は多い。特に印象に残るのは、スタッフとして運営を担ってきた元鉄道マンたちの姿だ。SLが走った時代を知る元運転手や機関士らが来館者を温かく出迎え、生き生きと当時の思い出や鉄道のマメ知識を語る―。そんな光景は、都市部の大規模施設にはない魅力だったと思う。

 同館は商店街に面し、地元の子どもらの遊び場でもあった。商店街で洋品店を営む女性(69)は「子や孫を連れてよく通った。子どもが集まる良い場所だった」と惜しむ。近くでは2号館がSLの展示を続けるが、1号館休館後は来館者が減ったという。この1年で失われたものは多い。

 市は休館後、市民や有識者を集め、同館の今後を検討する委員会を設置。検討委は厳しい財政を踏まえ、鉄道資料を他の公共施設などに分散移転し、早期の再開を求める提言をまとめた。昨年12月、提言書を大橋一夫市長に渡す際に、委員たちは「福知山の誇りが詰まった場所に」「市民に鉄道のまちの意識を広げてほしい」と訴えたが、市は現在も同館の今後について明らかにしていない。

 市はここ数年、PR戦略に力を入れている。「肉のまち」や「スイーツのまち」などを打ち出すが、地元の反応を見るに、古里に対する市民の愛着に根ざしているとは思えない。福知山には鉄道の他にも、風土が培った魅力的な伝統産業や食、服飾文化があるが、それらを生かせていないことに歯がゆさを感じる。

 「鉄道には先人の努力が詰まっている。引き継いできた『鉄道のまち』の火を消さないでほしい」。同館の足立和義館長(80)の言葉には、地域の発展を担った元鉄道マンの誇りがにじんでいた。市内にはトンネル跡やSLなど鉄道遺産も点在する。他の地域にはない福知山の財産だ。

 市は来年度、文化振興の方向性を初めて定めた「文化振興基本方針」を策定する。山間部の祭事や養蚕など既に失われつつある営みもあるが、福知山の近代化と共に歩んだ「鉄道」は、まだ間に合う。市民の誇りが詰まった歴史や文化遺産を大切にすることが、地域の魅力を発信する近道ではないだろうか。

[京都新聞 2019年2月13日掲載]

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