The Kyoto Shimbun
取材ノートロゴ

理解進まぬ協調運動障害 子の自尊心守る指導を

報道部 大西幹子
運動機能の発達を促す作業療法を受ける協調運動障害の子ども(京都市左京区・京都大)
運動機能の発達を促す作業療法を受ける協調運動障害の子ども(京都市左京区・京都大)

 「幼稚園に通う年長児の息子も、箸や鉛筆を持つ、服装を整える、折り紙を折るなどができず、劣等感で心がボロボロの状態でした」。極端な不器用さと運動の不得意を特性とする発達障害「発達性協調運動障害(DCD)」を取り上げた本紙記事を読んだ京都府内の母親が先月、手紙で感想を寄せてくれた。そこには、教育現場でDCDの理解が進んでいないために適切な対応がされず、傷ついた子どもの様子が記されていた。

 DCDは、5〜11歳の子どもの20人に1人の割合で見られるという報告があり、珍しい障害ではない。だが自閉症スペクトラム(ASD)などほかの発達障害との併存が多く、医師によってはその特性の一つと捉えてDCDの診断を付けない場合もあるといい、社会的な認知度は低い。

 手紙を寄せてくれた母親の息子もASDのみの診断が下りている。ASDの特性はコミュニケーションが難しいことなどが知られているが、母親は「息子の場合は生活での困りごとのうちの8割が、不器用さによるもの」と話す。幼稚園に「手先を使う動作は練習してもできないことがあるので適切に対応してほしい」と訴えたが、理解不足からか応じてもらえなかったこともあったといい、「春から通う小学校も、どの程度理解しているか分からず不安」と打ち明けた。

 ほかの発達障害を併発していない場合についても、障害のある子どもの作業療法を研究する京都大医学研究科の加藤寿宏准教授は「保護者も教員も『不器用な子、運動が苦手な子』という認識で終わり、医療機関の受診や適切な支援に至らないケースが多いのではないか」と推測する。

 字を書く▽ボールを蹴る▽教室で椅子に座って姿勢を保つ−など、DCDの子どもが、学校生活で直面する困難な場面は多い。加藤准教授は「DCDのある子どもはうつや不安の傾向が強いという研究報告がある。思うようにできないストレスや、その姿を人に見られる苦痛と関係している可能性がある」と指摘する。

 日本の公教育は、同年齢の子が同じ授業を同じ場所で受けるというスタイルが基本であるため、発達がゆっくりな子どもにとっては、自分ができないことを自覚しやすい。大勢の目に触れる作品展示や運動会も、教員にDCDの子どもを支えるという視点がなければ、本人には大きな精神的負担になりうる。

 発達障害者支援法では、協調運動障害も支援の対象として明記し、教育現場で子ども一人一人に応じた指導計画を作成するよう国と自治体に求めている。DCDの子どもに支援を届けるために、教育委員会や学校はまず、診断の有無にかかわらず当事者が身近にいるという認識を持ち、研修などを通じてより多くの教員に、この障害への理解を深めてもらう必要がある。そして本人が同級生との差を意識しなくてすむような指導方法の工夫を進め、傷つきやすい子どもの自尊心を守ってほしい。

[京都新聞 2019年2月20日掲載]

▼前の記事取材ノートからTOP次の記事▲

各ページの記事・写真は転用を禁じます
著作権は京都新聞社に帰属します
ネットワーク上の著作権について―新聞・通信社が発信する情報をご利用の皆様に(日本新聞協会)
電子メディアおよび関連事業における個人情報の取り扱いについて
京都新聞
京都新聞TOP