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キャッシュレス決済 現金主義の日本で広がるか

報道部 今野麦
外国人客の多い京都の百貨店や量販店では、相次いでスマホ決済を導入している(京都市下京区・大丸京都店)
外国人客の多い京都の百貨店や量販店では、相次いでスマホ決済を導入している(京都市下京区・大丸京都店)

 現金を使わず買い物をする「キャッシュレス決済」が、国内で広がりを見せている。訪日旅行客の増加や国内で次々に登場する決済サービスを受け、小売店や宿泊施設、タクシーなどがキャッシュレス決済に対応。政府は2015年に18・4%だった利用率を25年までに40%に高める目標を掲げるが、現金払いの慣習や文化が根付く日本でどこまで浸透するかは不透明だ。

 続々と誕生するキャッシュレス決済は、大半がスマートフォンを使う「スマホ決済」が大きなシェアを占める。専用のアプリから自身の銀行口座などにひも付けたQRコードを表示する方法が主流で、店の専用端末で読み取ると決済が即時完了する。素早い精算に加え、各社が力を入れるポイント還元などのキャンペーン合戦もあって、新規の利用者が急増している。

 すでにITや通信、金融など大手企業が事業参入し、スマホ決済市場は沸騰の様相を呈している。みずほ銀行は今月、大手銀行で初のスマホ決済「Jコインペイ」の運用を開始。京都銀行など全国約60の地方銀行で共同利用できる。先月には人気フリマーケットアプリで知られるメルカリも参入を発表した。

 総額100億円分のポイント還元で話題を集めるソフトバンクグループ系の「ペイペイ」、無料通話アプリLINEの「ラインペイ」など、スマホ決済はまさに戦国時代。激しいシェア争いの裏には、膨大な購買データを生かして商品開発などにつなげ、消費者を自社グループで囲い込もうという戦略がある。

 一方、国もキャッシュレス化を推し進める。狙いは現金の取り扱いに伴う莫大(ばくだい)な社会的コストの圧縮だ。輸送費や現金自動預払機(ATM)の維持費、銀行間の送金にかかる手数料は、低金利に苦しむ銀行の収益も圧迫する。深刻化する人手不足対策として、レジ業務などの負担軽減につながるとの期待も大きい。

 ただ、日本のキャッシュレス決済の普及率は出遅れている。経済産業省の15年の調査では、韓国は89・1%、中国は60・0%、欧米各国は30〜50%台と引き離されている。

 昨年末に取材で訪れた中国では、大型店のみならず市場の露店など多くの店でスマホ決済が採用されていた。現地の女子大生(20)は「買い物は100%スマホ決済」「現金は全く持ち歩かない」と当然のように話し、ともに訪中した京都の女子大生たちを驚かせた。

 国内では、電子決済やクレジットカードを嫌う「現金支持者」も多い。全国各地に張り巡らされたATM網で常に現金を引き出せる便利な環境と、貨幣そのものに対する厚い信用が、その根底にある。

 10月の消費増税に合わせた景気対策として、政府はキャッシュレス決済時のポイント還元を打ち出し、スマホ決済の普及をもくろむ。消費者の属性、嗜好(しこう)の把握が容易になるキャッシュレス決済は、データ流出などのリスクがある半面、革新的な技術やサービスを生み出す力も秘める。日本が「キャッシュレス先進国」になるか注目したい。

[京都新聞 2019年3月6日掲載]

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