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豪雨で続く避難指示 住民の状況、積極的把握を

舞鶴支局 高山浩輔
西日本豪雨で避難指示が続く地区(舞鶴市上福井)
西日本豪雨で避難指示が続く地区(舞鶴市上福井)

 昨年7月の西日本豪雨は京都府北部に大きな爪痕を残した。土砂崩れがあった舞鶴市上福井の21世帯52人が暮らす地区では、9カ月ほど経た今も市の避難指示が解除されていない。住民には市が借り上げた民間賃貸住宅などが提供されているが、長期化する避難生活に「早く帰りたい」と苦しい声を上げる。対策工事は時間がかかるため健康や生活の困りごとなど避難している住民の状況を積極的に把握し、それぞれに応じた息の長い支援が求められる。

 「これまで感じなかった生活音が気になる。慣れない環境で家族が体調を崩すことがあった」。豪雨以降、近くのアパートに家族3人で暮らす会社員女性(61)はわが家を離れたストレスの大きさを語る。避難前は90代の母親を自宅で介護していたが、福祉施設へ入所させざるを得なくなった。「本当はずっと面倒をみたかったが、設備面でどうしようもなかった。環境の変化で具合を悪くしないだろうか」と心配する。

 同地区では豪雨で南側の山の斜面が崩れ、大量の土砂と木が民家付近まで押し寄せた。大雨などで再び動き出す恐れがあり7月から避難指示が続く。京都府が今春以降、崩れた土木をせき止める砂防ダムの建設に着手し、本体は2019年度末の完成を目指す。ただ工事を担う府中丹東土木事務所は「通常は5年かかるような大規模な工事。無理に計画を早めており、工事の進行は読み切れない部分がある」とする。避難指示解除の時期も未定で、市危機管理・防災課は「早く帰ってもらいたいが危険な状態が解消されるまでは解除できない。前例がないためタイミングが難しい」とする。

 住民は1人暮らしの高齢者から子育て世代まで多様で、市営住宅や民間のアパートなど市内数カ所に分かれて住む。生活面のサポートは市が担当するが、昨年9月に高齢者世帯などへの訪問を実施して以降は個別の相談受け付けにとどまる。立命館災害復興支援室アドバイザーの塩崎賢明・神戸大名誉教授は「長期避難は精神、身体ともに影響を与え、健康な人でも住み慣れた家を離れると体調を崩す場合がある。住宅を提供して終わりではなく世帯ごとの問題を聞き取りなどで継続的に把握し支援体制を取ることが必要だ」と指摘する。

 避難指示の長期化は一部の人の問題ではない。市内には上福井の地区と同様に土砂災害警戒区域に入る場所が2209カ所あり、市街地にも点在する。地区では崩れた土木が民家手前で止まったが、住民や建物の被害が出ていてもおかしくなかった。取材した住民らは「まさか自分が長期避難するとは思わなかった」と口をそろえた。災害は自分たちの生活と隣り合わせにあると強く感じた。絶対に安全との思い込みはせず、備える意識を持ち続けたい。

[京都新聞 2019年4月3日掲載]

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