The Kyoto Shimbun
取材ノートロゴ

府内夜間中学新設「ニーズ把握できず」 再度、丁寧に検討すべき

報道部 三村智哉
夜間中学の洛友中でストーブを囲み、授業を受ける生徒たち(京都市下京区)
夜間中学の洛友中でストーブを囲み、授業を受ける生徒たち(京都市下京区)

 義務教育の学び直しができる「夜間中学」の新設について京都府教育委員会が3月、「府内ですぐに必要とのニーズを把握できなかった」と結論づけた。ただ、全国では近年、夜間中学が不登校経験者や外国人らの受け皿として見直され、新設や拡充を打ち出す自治体が相次いでいる。府教委も再度、丁寧に必要性を再検討すべきではないか。

 「皆さんから励まされ、夜間定時制高校に受かりました」。2月下旬、京都市下京区の夜間中学「洛友中」に通っていた女性(72)から弾んだ声の電話を受けた。女性は熊本県の山間部、五家荘の出身。幼少期は生活が厳しく小中学校に通えなかった。洛友中で学び直す姿を1月に本紙で取り上げた。取材を通じ、どんな年齢や国籍であっても、最低限の教育を学び直せば生活をより豊かにすることができ、その権利は誰もが持っているのだと感じた。

 2017年に義務教育を十分受けられなかった人の教育機会を保障する教育機会確保法が施行されて以降、文部科学省は各都道府県に1校以上の夜間中学の設置を促している。今月には千葉県松戸市と埼玉県川口市で新設され、すでに2校ある神奈川県でも相模原市が新設を前向きに検討する。夜間中学を設ける大阪府の7市は、府外在住者を断ってきたが本年度から相談に応じるよう申し合わせた。

 京都府教委も昨年、アンケート用紙2万枚を公共施設に置いてニーズを調べたが、新設を求める回答は15件のみ。この結果を参考に府教委は「すぐに必要とは確認できなかった」と結論づけた。しかし、他自治体の調査では100件以上の回答があった例もある。市民団体「京都府に夜間中学をつくる会」は「用紙を置いただけでは、届けるべき人に届かない。本気度が感じられない」と批判する。

 夜間中学の充実に取り組む元文科事務次官の前川喜平氏は3月に京田辺市で行った講演で「多くの人は学び直しをあきらめ、その気持ちを心の底にしまっている。その気持ちを引き出す調べ方をしなければならない」と指摘した。

 約40年間にわたり民間の夜間中学を運営し、今年1月に下京区で「読み書き教室」を始めた武村守さん(66)=伏見区=は、生徒募集のため、習いたい人がいそうな地域や団地を1人で回ってチラシ2万枚を配り歩いた。その結果、現在8人が教室に通っている。こうした活動こそ学びたい気持ちの掘り起こしというのではないだろうか。

 府内に夜間中学は洛友中があるが、市外在住者は入学できない。前川氏は「京都の規模であればさらに新設してもおかしくない」と語る。今後、不登校生や外国人の増加が見込まれるだけに、府教委は再度丁寧なニーズ調査を行ったり、洛友中に市外在住者が通えるよう協議したりしてもよいのではないだろうか。

[京都新聞 2019年4月10日掲載]

▼前の記事取材ノートからTOP次の記事▲

各ページの記事・写真は転用を禁じます
著作権は京都新聞社に帰属します
ネットワーク上の著作権について―新聞・通信社が発信する情報をご利用の皆様に(日本新聞協会)
電子メディアおよび関連事業における個人情報の取り扱いについて
京都新聞
京都新聞TOP