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西京の有料老人ホーム閉鎖 市自ら緩慢対応の検証を

報道部 田代真也
昨年8月に閉鎖したマザーハウスひまわり。元入居者への入居一時金の返金はいまだにされていない(今年1月、京都市西京区嵐山)
昨年8月に閉鎖したマザーハウスひまわり。元入居者への入居一時金の返金はいまだにされていない(今年1月、京都市西京区嵐山)

 もっとできることがあったのではないか。京都市西京区の有料老人ホーム「マザーハウスひまわり」が昨年8月に閉鎖し、70〜90代の入居者8人に入居一時金など少なくとも計約3600万円を返還していない問題を今年1月に報じたが、市の対応への疑念が晴れない。

 まず初動が悪かった。2012年に有料老人ホームへの監督権限が京都府から市に移った際、老人福祉法で義務付ける届け出を怠っていることを知った。にもかかわらず、12年と13年に1回ずつ届け出を催促しただけで、16年までの約3年間は指導した記録はない。放置と言われても仕方が無い緩慢な対応だ。

 その後、閉鎖までの2年余りの間では計12回指導したが、施設側は提出書類の作成に時間がかかるなどとして、かわし続けた。改善命令や警察への告発も可能だったが、市は「命令や告発で入居一時金の返還請求が相次げば、経営が傾き、入居者間で混乱が生じる可能性がある」として検討していなかったという。

 ある入居者の親族は「せめて未届けだと知らせてくれていれば、何らか対応はできた」と市への憤りを隠さない。市は昨年7月に初めて経営状態が悪いことを知ったというが、同3月には、札幌市の共同住宅で高齢者を中心に11人が死亡した火災を受けて施設内を実地調査している。帳簿などから経営不振に気付く機会はあったはずだ。

 厚生労働省によると、全国の有料老人ホーム1万3354施設のうち、未届けは6・3%に当たる899施設(昨年6月時点)。入居一時金を保障する保全措置を講じていない施設も59カ所あった。今年1月には首都圏で有料老人ホームなど37施設を運営する「未来設計」(東京)が高額な役員報酬による資金繰りの悪化を理由に経営破綻した。

 倒産は深刻化する人手不足も原因で起きている。東京商工リサーチによると、今年上半期の老人福祉・介護事業の倒産件数は55件で、介護保険法が施行された00年以降で最多を記録した。京都市内のある介護事業所の施設長は「人件費が上がり、経営を圧迫している」と明かす。市は今回の問題を氷山の一角とらえ、早期に検証すべきだ。

 「気の毒だ」「救済策を」―。今回の問題に関してインターネット上には入居者に同情する声が目立った。週刊誌の老人ホーム特集に「施設選びは大ばくち」といった見出しが躍る風潮の中、自己責任との意見が多数を占めるのではと思っていたので、ネット上の反応は意外だった。それだけ老人ホーム選びで悩む人は多いのだろう。

 「ついのすみかと思って入居したのに。なんであんな施設を選んだのか。悔やんでも悔やみきれない」。マザーハウスひまわりの運営会社側から今も約1千万円が返金されていないという女性(86)は住む場所と全財産を失い、現在は生活保護を受給する。泣き寝入りで終わらせてはいけない。

[京都新聞 2019年8月21日掲載]

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