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公的支援と創造 芸術に忖度はいらない

文化部 住吉哲志
全国の演劇やダンスなど舞台芸術に関わる人が約100人の客席を埋めた、全国小劇場ネットワーク会議。新しいビジネスモデルへの模索が続く(8月、京都市南区・E9)
全国の演劇やダンスなど舞台芸術に関わる人が約100人の客席を埋めた、全国小劇場ネットワーク会議。新しいビジネスモデルへの模索が続く(8月、京都市南区・E9)

 京都市の小劇場に、全国から舞台芸術に携わる人が集まった。テーマは「公的な資金に依存しない創造環境」。新たなファンの開拓や、企業への支援要請、劇団や劇場の経営改革などを2日間かけてじっくりと意見交換した。

 会場となった南区東九条の小劇場「THEATRE E9 KYOTO(シアター・イーナイン京都、略称E9)」も、民間企業や個人から寄付やクラウドファンディングで資金を集めて建設され、6月にオープンした。

 公的支援の脱却を目指すのは、行政からの自由を確保するためだ。脅迫は論外だが、行政当局の介入もあって、あいちトリエンナーレの「表現の不自由展・その後」は中止に追い込まれた。公的支援のもとで開かれる芸術祭では、行政の意向に左右されることは容易に起こりえる。芸術家の立場が不安定で、言論や表現の自由に対する介入の危険性は常につきまとう。

 「担当者や首長は、混乱を未然に回避するべく今後は無難な芸術家や演目を選定するのでは」。ランチミーティングで記者の隣に座った劇場関係者はそんな懸念を吐露した。掲げられたテーマは現在の不自由さの裏返しでもあった。どのような手順を踏むにせよ、結果として芸術活動が当たり障りのない内容になることは避けなくてはならない。芸術に忖度(そんたく)はいらない。

 とはいえ、芸術活動が公的支援を完全に脱却するのは難しい。会場でも「公的支援のない時代は、同世代の仲間はほとんど別の仕事に転じた」という声があがった。入場料収入だけで採算がとれる団体は一握りで、京都市でも若手劇団を中心に、公的な補助金を受けながら活動を続けている。アメリカを除けば多くの国で芸術を下支えしているのは公的な助成金だ。

 日本では公的支援の主体は地方に移りつつある。一昨年改正された文化芸術基本法では、地方自治体に文化芸術の振興計画作りが求められた。文化庁の方針で、予算や計画も以前より多くの割合が地方自治体の手に委ねられる。まちづくりや地域活性化と関連づけて芸術が支援される。つまり「不自由展」のような問題はどこでも起こりえる。

 あいちトリエンナーレや、芸術祭としては国内最大級の瀬戸内国際芸術祭が始まったのは2010年。京都市で10月に開かれる京都国際舞台芸術祭「KYOTO EXPERIMENT」や、現代アートを集めた木津川市の地域芸術祭「木津川アート」も同じ年にスタートし、ちょうど10年目を迎えた。地方での芸術祭も各地で定着しつつある。芸術と公的支援のあり方を考えるには、税を納める一人一人が直接触れてみるほかはないだろう。

 そのうえで、自由な創造環境を守りながら、芸術家をどのように選定し、支援するのか。国全体だけでなく、各自治体単位でも芸術のあり方に議論を深めるべきだ。

[京都新聞 2019年9月4日掲載]

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