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社説:老後の税制 拙速避け骨太の議論を

 政府税制調査会(首相の諮問機関)は、老後の生活資金を蓄える現役世代の支援に向けた税制の検討を始めた。

 安倍晋三政権が看板政策に掲げる「全世代型の社会保障」推進のため、現役世代の自助努力を促し、資産形成を支援する税の優遇措置を検討する方向性とみられる。

 国の財政悪化に伴い、公的年金の給付水準が今後次第に抑えられていくのは必至だ。こうした中、老後の蓄えをなるべく個人に「自己責任」で準備してもらいたいとの政府の本音が透けて見える。

 現在、公的年金を補完する制度には、さまざまな仕組みが併存している。個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」や少額投資非課税制度(NISA)、個人年金保険、財形貯蓄などだ。

 高齢化で各種の制度や金融商品の重要性は高まっているが、就労形態の違いなどで利用できる制度や上限が異なり、複雑だ。

 制度を簡素化できれば利用者の拡大を期待できる。就労形態にかかわらず利用できる米国の税優遇口座「個人退職勘定(IRA)」も参考に、横断的で使いやすい仕組みを検討するという。

 年金給付の将来像も踏まえた丁寧な制度設計が求められる。

 このほか、勤続20年を超えると退職金にかかる所得税が有利になる制度の見直しなども論点となる。終身雇用を前提とした制度の変更につながりかねないだけに十分な議論が必要だ。

 安倍政権は「人生100年時代」を見据え、今後3年間で全世代型社会保障改革の断行をうたう。65歳以上の雇用拡大や、年金の受給開始時期を70歳より遅らせることを可能にする生涯現役化と合わせ、社会保障に支えられる高齢者を少しでも減らそうというわけだ。その方向性は理解できる。

 だが論点は多岐にわたる。拙速を避け、長期的視点で骨太の議論を求めたい。

 税制を巡っては、与党の税制調査会も月内に始動し、来年度の税制改正に向けた政府・与党の議論が本格化する。来年10月の消費増税時の景気対策や軽減税率導入に伴う財源確保を含めた検討が迫られる。

 人口減と少子高齢化が進む中、社会保障制度を持続可能にするには、増税や歳出削減は避けられない。安倍政権は来年の参院選までは痛みを伴う国民負担の議論を先送りするとみられるが、国の将来を見据え、税制の青写真を国民に早く示す必要がある。

[京都新聞 2018年10月12日掲載]

【 2018年10月12日 11時46分 】

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