出版案内
福祉事業団
京都新聞AR

江戸初期の世界地図、官軍「山国隊」輩出の地で発見

山国神社で見つかった江戸初期の世界地図。絵の下に日本と貿易関係のある都市について説明がある(京都市右京区京北・山国神社)
山国神社で見つかった江戸初期の世界地図。絵の下に日本と貿易関係のある都市について説明がある(京都市右京区京北・山国神社)

 江戸時代初期の世界地図が京都市右京区京北の山国神社で見つかった。各大陸を描いた絵の下に、日本と貿易関係がある都市の情報などが文章で記されている。また中国(明)を描いた大型地図も発見された。いずれも極めて珍しい地図という。山国地域は明治維新の戊辰(ぼしん)戦争で官軍にはせ参じた農兵組織「山国隊」を輩出した地として知られ、研究者は「外部の情勢に関心が高い地元の有力者層が鎖国時代に世界を語り合ったのかもしれない」と話す。

 山国地域に残る古文書を20年以上調査している中央大の坂田聡教授(中世史)らの調査団が見つけ、東京大史料編纂(へんさん)所の共同研究グループが確認した。

 世界地図は「貿易情報文付き世界地図」と呼ばれるもので、1637(寛永14)年に長崎で作られた原本を85(貞享2)年に模写されたと記されている。縦約1・2メートル、横約1・3メートルの紙に各大陸が描かれ、黄色や赤色で塗り分けられている。中国には「大明國」とあり、「いんぢあ」や「ろうま」の文字もある。貿易情報としては南京やイギリス、オランダなどの港と長崎の航路距離のほか、日本との貿易品、現地の様子が列挙されている。

 この地図は昭和はじめに東大史料編纂所が存在を確認したが、1990年に別の研究者が神社に照会したところ、見当たらないとの回答を得たため、これまで所在不明とされてきた。

 中国の地図は新発見で、上部中央に「大明地理之図」と表題がある。縦約3メートル、横約4メートルで1690(元禄3)年に京の医師浅井周伯の私塾「養志堂」にあった絵図を模写したと記されている。

 東大史料編纂所の共同研究グループの一員として昨年秋に現地で地図を確認した天理大の藤田明良教授(東アジア海域史)によると江戸初期には欧州の世界認識に影響され、さまざまな世界地図が作られた。しかし、「貿易情報文付き世界地図」の所在はほかに12点しか確認されておらず、「大明地理之図」もわずかの確認例しかないという。

 いずれも神社所蔵に至った経緯は分からない。藤田教授は「当時の世界地図の所有者は大名や学者が多く、神社所蔵は珍しい。寄進したと考えられる山国郷の人々の旺盛な知識欲をうかがわせる」と指摘する。

【 2019年02月11日 18時36分 】

ニュース写真

  • 山国神社で見つかった江戸初期の世界地図。絵の下に日本と貿易関係のある都市について説明がある(京都市右京区京北・山国神社)
京都新聞デジタル版のご案内

    観光・社寺のニュース