日本人の忘れもの 第2部

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京都発「日本人の忘れもの」キャンペーン第2部

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第40回 3月31日掲載 対談

日本人のDNA
京都の人には職人を育てようという意欲を感じる

中西浩一さん

株式会社オンリー代表取締役会長兼社長
中西 浩一 さん

なかにし・こういち 1946年、京都市生まれ。70年、京都山科にオーダースーツ専門店「紳士服中西」を開業後、76年、京都北山通にメンズブティック「オンリー本店」をオープン。83年、第25回日本紳士服技術コンクールで、「高松宮技術奨励賜杯賞」を受賞。現在70店舗を全国展開。今年から商品ブランドを「オンリー」に統一。

伝統の世界に弟子入りしたい若い人が増えている

佐藤敬二さん

京都精華大教授
佐藤 敬二 さん

さとう・けいじ 1948年、京都府生まれ。京都市立芸術大美術学部工芸科デザイン専攻卒。京都市産業技術研究所研究部長を経て06年から現職。専門は工芸・工業デザイン論、伝統産業論、素材論。竹集成材による家具・インテリア用品などのデザインを多数手がける。

イメージ その1
職人技を残す「ものづくり」の精神をベースに、現代人の趣味、嗜好に合わせた商品を提供する。

中西◉弊社は1970年、京都市山科区に紳士用オーダースーツ専門店をオープンしたのを創業としています。当時は、スーツも職人技が評価される一種の工芸品的価値のあるものとして消費者は見てくれていました。ところが大量生産・大量消費の時代を迎え、毎日のように着用するスーツは、いわば消耗品のように見なされるようになりました。

よい物を多くの方の手に届けて喜んでもらえてこそ商人としての義務だと考えていた私は、職人技を随所に残しながらも製造工程を大幅に見直すなどして、平均点以上の品物で、かつお手頃価格で身に付けてもらえるスーツを開発、1999年から「ザ・スーパースーツストア」の名の下に全国に店舗展開を開始しました。

弊社では、京都のテーラーとして育てていただいた「ものづくり」の精神をベースに、現代人の趣味、嗜好(しこう)に合わせた多くのお客様に喜んでいただける商品を価値ある価格でお届けしたいと考えています。

佐藤◉まさに、伝統産業もそのようなものづくりをする時期にきています。明治時代の京都には、全国から集う若手職人を育てる工芸に関する各分野の専門学校があり、そこで学んだ人たちが技を伝播したという歴史があります。例えば、京都市立銅駝美術工芸高等学校の前身の京都市美術工芸学校や京都工芸繊維大の前身である京都高等工芸学校などがそうです。現在京都には京都市産業技術研究所の伝統産業技術者研修制度や伝統工芸大学校があり、京都瓦技術専門学院、京都府左官技能専修学院など業界組合の専修学院がありますが、全国的には職人育成の研修機関は減っています。そもそも初等・中等教育機関に伝統産業・伝統文化を伝えるカリキュラムが少ないから、次世代を担う子どもたちに教え伝えることができないのです。

ただ最近、伝統工芸や伝統芸能などの世界に弟子入りしたいという考えを持った若い人たちが増えているように感じ、私も頼もしく思っています。また、自動車などのプロダクトデザインに携わる人たちの多くが京都に来て和の美のルーツを探し求め、製品デザインに反映するべく努力もしています。

中西◉そうです。洋服の世界でも、有名ブランドのクリエーターたちが京都に滞在し、いろんなエッセンスを吸収してデザインに取り入れていますよ。

全国の直営店を巡回していて思うのですが、年を重ねるごとに、京都に戻ると何となくほっとします。やはり京都は、東京など他の大都市がすっかり忘れてしまった日本人のDNAがまだ残っている町だからなのでしょうね。京都のお客さまには、商売人、職人たちを育てようという意欲を強く感じています。本物を見分ける確かな目を持った京都の人たちに多く叱られ、少しだけ褒められてきたからこそ、ここまでやってこれたんだと深く感謝しています。当社が本社を京都から他都市に移さない理由も、そこにあります。

佐藤◉第2次世界大戦後、京都市内各地に進駐した米軍が接収し、伝統の色濃く残る建物や庭園を洋風に変えてしまったこと、また、マンションの増加や耐用年数の経過などにより、明治から昭和初期の名建築が、耐震化費用がかさむために取り壊されることにより、市内の景観が変わってきています。市の景観条例制定で京都らしい町並みが保存されつつありますが、四季の節会に純感な私たちは、生活文化の近代化によって京都が世界に誇る建築文化や季節感がなくされてきたことを忘れてはなりません。

最近は、学生たちの就活時期に、男女の別なくリクルートスーツばかりが目に付きますね。実は、知り合いの女性の芸大生が和服で大手メーカーの面接に臨んだら、見事に就職出来た事例があります。オンリーさんの売り上げに影響するような発言で申し訳ないのですが、服装もその人の個性を表しますから、企業側も自由な装いでの就活を奨励したらいいのになと思っています。

中西◉実は今年からでしたか、ある大手の銀行が面接時にはリクルートスーツは禁止との通知を学生たちに出しています。個性化の時代、スーツの将来像を見越して、学生たちの個性に応じた洋服も当社では積極的に提案していくつもりです。

若い人といえば、これだけは伝えておきたいことがあります。これは私の個人的な忘れものですが、もっと学問をしておけばよかったなと、この年になって強く感じています。さらに私の夢として、このスーツなら、いくらまでなら払ってもいいというような、お客さまがその商品の価値・技術を判定し価格を決める、お布施的な店をいつか開店したいと考えています。

佐藤◉確かに、本物を見定める人が少なくなった現在、そういう店も人材育成面では面白いアイデアですね。

団塊の世代は、目利き感覚もありますし、若いときからおしゃれ意欲が旺盛です。オンリーさんの季節感があり、個性的でお客さまにピッタリなスーツが注目される時期に来ているのではないでしょうか。

きょうの季寄せ(三月)
舌出して 泥吐く鉢の 蜆(しじみ)かな 大谷繞石(ぎょうせき)

しじみは(浅蜊(あさり)にしろ)スーパーの売場に年中あるような感だが、春の季題である。その上、ほとんど砂を吐かせて売られているので、昔のように砂を噛(か)む思いは少ない。

従って「水更へて鉢の蜆や清らかに 繞石」にみるように蜆の砂出しの入れ物は、「擂鉢(すりばち)に籠の蜆をうつしけり 格堂」「日当りや手桶(おけ)の蜆舌を吐く 寅日子」であったりした。
(文・岩城久治)

「きょうの心伝て」・40

吉岡 和美 さん 主婦(京都府亀岡市/55歳)

もったいない

「もったいない、もったいない、もったいないオバケが出るゾ」

四半世紀前、もっと前だったか。物を粗末にしないこと、食べ残しや偏食を直す……。幼いころから色々(いろいろ)なものを大切にする気持ちを根付かせるようなCMがあった。

以前、コンビニの店員をしていたころ、一定の基準で決められた消費期限が迫っている、というだけで、まだまだ食べられる食品を、次々と店頭から下げ、どんどん廃棄しなければならなかったことに、「世界のどこかで餓死している子どももいるのに…」と、強い抵抗感と罪悪感すら感じていた。新しい物を求める消費者と食中毒を懸念する業者側を考慮すると、仕方ないのかもしれないが……。

今では、限りある資源の節約、エコ、リサイクルといった言葉が叫ばれ、使い捨てが美徳とされた時代の浪費は改善されつつあると思うが、『もったいない』が、死語になってしまった気がしてならない。

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