日本人の忘れもの 第2部

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京都発「日本人の忘れもの」キャンペーン第2部

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第52回 6月23日掲載 対談

日本食
「一汁三菜」を無形文化遺産に

佐竹力総さん

美濃吉 代表取締役社長
佐竹 力総 さん

さたけ・りきふさ 1946年、京都市生まれ。立命館大法学部卒。株式会社美濃吉に入社。米国サンフランシスコ市立大ホテル・レストラン学部を卒業後、同社、専務取締役、副社長を経て、95年代表取締役社長に就任。現在、京都府料理生活衛生同業組合理事長やクールジャパン推進会議議員、全国料理業生活衛生同業組合連合会会長などを務める。

文化産業が経済を活性化させる

マリア・パヘスさん

同志社大経済学部教授
河島 伸子 さん

かわしま・のぶこ 京都市生まれ。東京大教養学部卒。英国ウォーリック大文化政策研究センターリサーチフェローを経て現職。同志社大日本語・日本文化教育センター所長を兼任。専門は、文化経済学、文化政策論、コンテンツ産業論。文化経済学会<日本>副会長、文化審議会委員などを務める。

イメージ その1
日本料理店は、しつらい、おもてなし、料理、礼儀作法といった文化が凝縮された空間。
(昭和初期の美濃吉の厨房)

佐竹◉当社は享保元年に茶屋として創業、現在は本店の「竹茂楼」、多店舗展開の「美濃吉」で伝統的な京料理とおもてなしを提供し、多くのお客さまに親しまれています。

昨今の飲食業界は、効率を求めてマニュアル化・低価格化が進み、画一的なメニューやサービスを徹底しています。レストランの語源は「疲れを癒やし元気を出す場」という意味のフランス語ですが、利便性や価格を追求するレストランでは、語源のような本来の意味が失われているのではないでしょうか。

セルフサービスの飲食店が増えた一方で、近年は高齢化の影響もあり、お年寄りが利用しやすい昔ながらの喫茶店やテーブルサービスが見直されています。行きつ戻りつの「振り子の原理」が食の部分でも働いているようです。

河島◉ファストフードの隆盛とともに、現代人は落ち着いて食事を味わう感覚が薄れてきたようで、学校の教室や電車の中でも、おにぎりなどを平気で食べている人を多く見掛けます。食事は本来プライベートな行為なので、不特定多数の面前での飲食はおかしいですよね。特に2000年代に入ってからは、かつての日本人が備えていた食事に対するけじめや、食を楽しむ文化が忘れられているように感じます。

最近ではテレビで食べ物を紹介するとき、野菜でも何でも「甘くておいしい」と表現が多用されているようです。もっといろいろな風味があるにもかかわらず、味の感じ方、おいしさの捉え方まで画一化されてしまったのかと危機感を覚えます。

佐竹◉そうですね。日本には四季折々の食材、地域ごとの郷土料理などさまざまな味わいがあります。これらを次世代へ受け継ぎ、世界に発信しようと、現在、日本食文化をユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録申請しており、12月には結果が出る予定です。登録内容は、懐石料理のような高級食ではなく、和食の基本である「一汁三菜」。米を中心に、おかずは地元食材を使った地産地消、みそ汁と漬物は、だしや発酵食品を利用し、自然にも体にも優しいことを強く訴えています。

自然や生命への畏敬の念として「いただきます」「ごちそうさま」と言うのも日本固有の文化ですが、最近の若い人は、この習慣も忘れがちなのではないでしょうか。

河島◉私は以前アメリカに住んでいましたが、確かに「いただきます」に代わる表現方法はなく、慣れないうちは違和感を覚えました。さらに、何人かで食事をするとき、同席する相手を待たずに食べ始めることもよくあります。みんなそろって「いただきます」という風習も、無形遺産として後世に残したい、日本が世界に誇る食文化です。

一方で「日本はどんな文化なのか」「政治や経済はどうなっているか」と聞かれても、日本人の多くはうまく答えられない傾向があります。外国人の方が「私の国の文化・社会がこうだから、こういう現象になる」と論理的に説明できる人が多いと思います。グローバル社会を生きるためには、自国の伝統文化や社会構造を理解し、自分の言葉で語れなくてはなりません。日本についての知識を深め、解説できる教育が今後必要だと痛感します。

佐竹◉食の分野でも教育は大切で、京都市ではいち早く食育に着目し、10年以上前から実施されています。味覚は9歳くらいまでに決まるといわれていますので、小学校低学年の子どもを対象に、和食の味の要となる「だし」を味わってもらう授業を開催しています。

宣伝っぽくなりますが、日本文化を学ぶためには、日本料理店を訪れるのもいいでしょう。しつらい、おもてなし、料理、礼儀作法といった文化が凝縮された空間です。本を読んで覚えるより、百聞は一見にしかず、感覚的に体験することが一番の勉強になるのではないでしょうか。

海外では今、日本食ブームが起きていますが、外国人シェフが和食の基本や生魚の衛生管理を知らずに見た目だけをまねていることも多いようです。食に携わる私たちは、人さまの命を預かる仕事だと心して臨まねばなりません。そこで私は日本文化を国内外に発信するクールジャパン推進会議で、正しい日本食を海外に伝え広める「食の伝道師」を提案しています。

河島◉日本食はもちろん、漫画やアニメ、ゲーム、ファッションなどの日本文化が、海外で人気を集めています。外国の好みに合わせたものを輸出するのではなく、日本人が好きなもの、いいと思うものを、自信を持って発信し、知ってもらうことがグローバル化の基盤になるでしょう。

文化は人間のよって立つところであり、誇りやアイデンティティーにつながるものです。漫画や音楽などのコンテンツは関心の有無や好き嫌いがありますが、食は誰もが共感でき、さまざまな人が楽しんで参加できるので、文化の発信においても重要なポジションだと言えるでしょう。食を含めた文化産業が、今後の日本経済を活性化させる鍵になりそうです。

きょうの季寄せ(六月)
夏の月 蚕は繭に かくれけり 渡辺水巴(すいは)

きょうは旧暦5月の望(ぼう)、太陽・月・星の暦によると今年最大の満月になるそうだ。地球と月の運行の関係によって月の大きさが異なって見える。意識して見ないことには大差なく見えてしまう。

掲句、蔟(まぶし)(蚕具(さんぐ)の一種)に移された蚕が絹糸を吐きつづけ繭ごもりしたことを言う。昔語りのような美しい景である。
(文・岩城久治)

「きょうの心伝て」・52

山田 順三 さん (京都市伏見区/74歳)

見守り隊が見守られて

朝の学童の通学時間帯に、見守り隊として信号のある交差点に立って、もう6年が経過した。特に事故もなくホッとしている。「おはよう」と声をかけると、「おはよう」と元気な学童の声が返ってくる。

私は学童だけでなく、通行者や、自転車の人にも声をかけている。朝は一日の始まりであり、(今日も頑張れよ)という激励のつもりである。

過日、自転車の男性が私のそばに寄ってきて「いつもご苦労さまです。私は本日で会社を定年退職します。明日からは会えませんが、どうぞお元気で・・・・・・」とペダルに力を入れて、爽やかな風とともに去っていかれました。「ご苦労さま」、私は思わず彼の背中に叫びました。

見守り隊の私が、見守られていたのだ。

こんな楽しいドラマのような事実が、いろいろあって、私の元気の源泉になっている。

今朝もまた、「おはよう」と声をかけている。

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