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大山崎町長選で現職敗北 「相乗り」弊害、浮き彫りに

報道部 小野俊介
決起集会で気勢を上げる山本圭一氏の支持者。国政与野党による相乗りは油断を招いた(京都府大山崎町・町体育館)
決起集会で気勢を上げる山本圭一氏の支持者。国政与野党による相乗りは油断を招いた(京都府大山崎町・町体育館)

 1+1は、算数では2になる。だが、必ずしもそうならないのが、政治の世界だ。

 10月に投開票された京都府大山崎町長選で自民、立憲民主、国民民主、公明各党の推薦を受け再選を目指した山本圭一氏(46)が共産党支持の前川光氏(62)に破れた。

 人口1万6千人足らずの小さな町の選挙と侮るなかれ。この結果に多くの政界やマスコミの関係者は驚嘆した。金星をつかんだ共産からも「まさか前川氏が勝つとは…」との声を聞いた。同町では2006年にも、共産推薦の新人が自民などの推薦を受けた現職を破る波乱があり、今回の背景にも共産勢力が比較的強いという一定の素地があるだろう。ただ、それだけでは説明できないデータもある。

 昨年10月の衆院選。同町の比例票の得票率は、自民、立憲民主、旧希望の党(現国民民主)、公明を合わせて68%に上ったが、共産は14%にすぎなかった。ところが今回の町長選では、山本氏の選対関係者が「上滑りだった」と振り返るように、数的優位を生かすことができなかった。

 それは、国政与野党による「相乗り」の弊害にほかならない。告示日直前の山本氏の決起集会には、野田聖子前総務相をはじめ4党の幹部が勢ぞろいした。「大山崎町長選は大丈夫」。相乗りは支援者の油断を生んだ。

 弊害はほかにもあった。各政党の考え方の違いに配慮することで、どうしても選挙公約が総花的になる。山本氏の公約は、保育所民営化への反対など争点を明確化した前川氏と比べ、影が薄くなった印象が否めない。

 その前川氏は元自民党員だが、共産支持という政党色を前面に出さず、保育所民営化に反対する町民を巻き込んで「町民派」と印象付けることに成功した。自民などが「共産隠しだ」と批判すればするほど、国政与野党主導の選挙戦に対する町民の違和感が浮き彫りになったように思う。

 こうした選挙構図は初めてではない。4月の府知事選。初当選した西脇隆俊知事を約8万票差まで追い上げた福山和人氏は、共産の推薦を得たが、選挙母体には多くの市民団体が参画し、従来の共産の選挙戦とは一線を画した。

 来春の木津川市長選でも共産が候補を立てず、無所属候補を支持する方針を決めるなど、同様の方式で臨もうとする動きが出ている。

 一方、自民などはかつて共産の支援を受けた故蜷川虎三元知事の例を引き合いに「二度と共産政治には戻さない」という従来の主張を繰り返しているが、どれだけの市民の心に響くかは疑問だ。

 京都は共産が一定の勢力を持つため、共産候補と対決する候補にとって政党の支援は魅力的だろう。だが政党が前面に出るやり方が地方分権時代にふさわしいと言えるのか。候補者も政党も有権者の変化を見極める必要がある。

[京都新聞 2018年12月26日掲載]

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