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憲法集会後援見送り問題 熟議へ市民の力問われる

報道部 本田貴信
木村教授の講演や高校生の研究報告を基に改憲について議論を深めた「憲法と人権を考える集い」(昨年11月18日、京都市上京区・同志社大)
木村教授の講演や高校生の研究報告を基に改憲について議論を深めた「憲法と人権を考える集い」(昨年11月18日、京都市上京区・同志社大)

 京都弁護士会主催の「憲法と人権を考える集い」に長年協力してきた京都府や京都市など府内自治体の多くが、48回目となる昨年11月の集会で共催や後援を見送った。今回は憲法9条改正がテーマで、改憲の発議が現実味を帯びる中、集いが「政治的」だとして自治体が足踏みした格好だ。目下の政治情勢だからこそ、憲法について考える重みは増す。消極的にも映る行政の姿勢には疑問を感じざるを得ない。一方、行政に左右されることなく熟議を生み出す市民社会の力量もまた問われている。

 例年の共催を見送った府は理由として、自民党改憲案の問題点を指摘している憲法学者の木村草太・首都大学東京教授が講演することを挙げた。「政治的内容を含む可能性がある」とし、「改憲について具体化した議論が進む現在の政治情勢が、大きな判断要素になった」と説明した。

 集会前にこの問題を報じた私は、集会も取材し、木村教授の講演を聴いた。その際の印象では、自衛隊と憲法を巡る解釈や論点整理に重点が置かれ、党派的な行動を呼び掛ける内容ではなかった。後日、木村教授へ一連の経緯について考えを尋ねると、「私は学術的見解を表明するだけのこと。政治的意味合いはない。行政側の対応は多数派におもねる行動だと受け止めているが、萎縮してはいけない」と答えた。

 憲法がテーマの集会を巡っては自治体の後援見送りが各地で相次ぐ。立命館大の小松浩教授(憲法)は「憲法を語ることが政治的という風潮が広まれば、自由な議論が一層求められる今日にあって、憲法と市民の距離を広げてしまう」と危ぶむ。公務員の憲法尊重擁護義務を根拠に「憲法への関心を高める責任は地方自治体にもある」と説く。

 府は、共催・後援の審査基準で「政治的内容を含まない」と定めているが「政治的」の文言に定義はない。自治体の側には、こうした基準が恣意(しい)的な運用につながる危険をはらんでいるとの自覚が必要だ。

 一方、一連の経緯は、集会を開く市民の側にも問いを投げかけていると思う。龍谷大の石埼学教授(憲法)は公共施設の貸し出し拒否などがあれば問題だと断った上で、「憲法を巡る自主的な集会に行政のお墨付きを求める姿勢に疑問を感じる。守るべきは集会の自主性だ」と語る。行政の後ろ盾を過度に求めてしまえば、内容の自己規制に陥る恐れもある。

 今回の集会では高校生有志による研究発表もあった。参加した同志社高の2年他谷尚さん(16)は「特定の見解を排除せず、多様性な意見をぶつけ合う開かれた場こそが求められている」と話した。3年梅垣里樹人さん(18)は「関心の薄い人も巻き込んでいくことが必要だ」と言う。

 高校生のこうした意見は、踏み込んだテーマで臨んだ集会の意義を映し出している。市民が自ら分厚い公論を実現する。取材を通じ、その重要性を改めて感じ取った。

[京都新聞 2019年1月16日掲載]

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