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見るだけで楽しいモザイクタイル絵 大津の「小町湯」

浴室では富士山のモザイクタイル絵が迎えてくれる(大津市逢坂2丁目・小町湯)
浴室では富士山のモザイクタイル絵が迎えてくれる(大津市逢坂2丁目・小町湯)

 大津市内を浜大津から逢坂山へと上っていくと、右手に小町湯の小ぶりな唐破風が見えてくる。印象的な外観に見覚えのある方も多いのではないだろうか。

 屋号は、もちろん小野小町から。晩年、逢坂山に庵を結んだという伝承があり、近くの関蝉丸(せみまる)神社の下社には、小町塚が立っている。

 「私で5代目になります」というご主人の秋岡秀俊さん(68)に小町湯の歴史を尋ねると、江戸文政年間生まれの初代が、湯屋商を営んでいた記録が残っているという。創業した年ははっきりしないが、江戸末期か明治初期から続いていることは間違いなさそうだ。

 脱衣場に入ると、格子を組んだ高い格天井(ごうてんじょう)の下に広がる、開放的な空間が心地いい。天井近くには、いつからいるのか、古い福助人形が脱衣場を見下ろしている。

 ここまででも湯屋情緒あふれる小町湯だが、特筆すべきはモザイクタイル絵だ。浴室の奥壁一面を彩るタイル絵のメインモチーフは富士山。ちょうど、男湯と女湯の境目に頂がある。「昭和37年か38年の改装時に取り付けました」と秋岡さん。浴室の側面では、エンゼルフィッシュのタイル絵も彩を添えている。

 小町湯で見られる1センチ四方ほどのタイルを組み合わせるモザイクタイル絵や、床や浴槽などに使われているモザイクタイルは、ほとんどが岐阜県多治見市の旧笠原町で生産されたものだ。一昨年、多治見市モザイクタイルミュージアムというモザイクタイルの殿堂的施設がオープンし、予想以上の入館者を集めている。小町湯のタイル絵やそのほかのタイルも、旧笠原町産でほぼ間違いない。

 銭湯のタイルを観察すると、昭和50年代を境に、施工性などから比較的大きなタイルが多用され、モザイクタイルは姿を消してきている。小町湯では、それ以前のタイルが何種類も見られ、タイルを見るだけでも楽しい。

 特に曲面に沿った部分が私のお気に入りなのだが、共感いただけるだろうか。是非、小町湯で実際に見ていただきたい。(フリーライター 林宏樹)

 ◇小町湯

大津市逢坂2の1の17

077(522)8131

午後3時30分~9時営業

月曜定休

駐車場なし

 ◇林宏樹(はやし・ひろき) フリーライター、銭湯コラムニスト。1969年京都市生まれ。東京で見かけた富士山のペンキ絵が地元にはないのかという疑問から、京都府、滋賀県の現存する銭湯すべてに入浴。著書に「京都極楽銭湯案内」「京都極楽銭湯読本」(淡交社)など。

【 2018年10月12日 11時17分 】

ニュース写真

  • 浴室では富士山のモザイクタイル絵が迎えてくれる(大津市逢坂2丁目・小町湯)
  • 色とりどりのタイルを見るのも楽しみ
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